| J: |
監督は国内外のコンペティションに作品を出品してらっしゃいますが、出して、賞を貰う作品と、はずれる作品の違いは何なんでしょう?よくTVで「〇〇〇賞候補ナンバー1」とか言ってますけど。(笑) |
| K: |
海外の映画祭に何度か行くと、だんだん判ってくるんですけど、なんか海外の映画祭で賞を取るコツのような物が、どうもあるようなんですよ。よく知りませんけどね。これはつまらないことですね。賞をくれるのは別に構わないですけど。(笑)少なくともその為に映画を作るという発想には立てないですし。だいたい賞というのは審査員が決めるんですね。それで「今年は誰某が審査員になりそうだ」なんて情報を手に入れると、それが好むように作るというのが、あるようなんです。 |
| J: |
そんな話、聞きますね。 |
| K: |
ええ、それでまんまと賞を取って、「ザマー見ろ!」って言う人も、世の中には居るんでしょうが、ま、バカバカしいって言うだけですね。 |
| J: |
そういう賞を取れば、資本が舞い込んできて、金をかけた映画が撮れるということに関して、魅力は感じられない? |
| K: |
ほとんど感じられないです。これは経験的になんとなく判るんですけど、仮に賞を取って金が舞い込んで来たとして、その舞い込んできた金というのは、必ず次もまた賞を取るように要求されるような金ですよ。 |
| J: |
あー、そうですか。(笑) |
| K: |
ええ、がんじがらめですね。 |
| J: |
あー、そうでしょうねえ。金出すというのは投資ですからね。 |
| K: |
で、これは賞だけではない。大ヒットも同じです。大ヒット作を作って、また凄いお金を出す人が出て来たら、必ず更なる大ヒットを狙う・・・。まあ、グローバリズムになってますから、日本もイヤでもそうなるかもしれませんけど、市場経済とはそんなもんだと思います。で、それが逆らい様の無い社会の流れかもしれないけども。それはもう一種のさっきから言っております、映画に対する幻想の様なものはそこで全て打ち砕かれることになりますね。だから、なんかの結果として舞い込んでくる金ほど、怖いものはないですね。
 |
| J: |
仮にそんな、しがらみが全然なくて、単なる宝クジで当たった様なお金だったらどうですか?バカな質問ですけど。(笑) |
| K: |
それは、嬉しいですね。(笑) |
| J: |
で、「好きな映画を作って下さい」と。無邪気に、観客のリアクションも考えず、自分の為にというか、作れるとしたら・・・。プロの監督にこんな質問はどうか?と思いますが。(笑) |
| K: |
そんなこと、あったためしがないんで判んないんですけどね。ウーン、どうするだろう?本当に金をかけた、誰にも判らないような映画撮っちゃうかもしれませんね。 |
| J: |
やっぱり、「誰にもよく判らない・・・」という所にいっちゃいますか?(笑) |
| K: |
ええ、いやー・・・。 |
| J: |
「それやったら、タイタニック
一回撮ったろか」とか。(笑) |
| K: |
それは、ないですね。 |
| J: |
あ、そうですか。(笑) |
| K: |
ええー、ウーン・・・、別に判らない映画を撮りたいと思ったことはないんですけども・・・。 |
| J: |
結果的に判ってもらえないという? |
| K: |
ええ、つまり自分では面白い、自分が面白いと思うものを作っているんですね。「世界でこれを面白いと思うのは自分だけかもしれないけど」というね。今までだって、自分が面白いと思うものしか撮ってないんですよね。自分が「つまんない」と思ったら、撮る気しないですよね。ただ自分というレベルも色々あって、自分自身というのはなかなか複雑で、商業映画の場合は自分の中でも「これは結構、一般性持ってるよね」と思われる部分で撮ってるんですよ。それでも一般性、100%はないんですよ。あくまで自分ですから。まあ自分で、そんなに異常な人間とは思いませんから、人が面白いと思う物は自分も面白いと思いますから。自分が面白いと思って、一般と近いであろうという部分で撮ることが多いんですけど。まあ、「何やってもいい」というのなら、自分の中の一番コアな「これやったら多分普通の人は、どう言うか知らないけど、自分としては面白いな」っていう隠していたコアな部分をやってしまうかもしれませんね。 |
戦争という(不条理な)メカニズム。
あっていいいはずがないのに、
こうまで絶え間なく続けられているものを、描いてみたい。 |
| J: |
具体的には? |
| K: |
お金をかけないと出来ないから、いつも断念しているのは「戦争映画」ですね。戦争映画というとなんか語弊があるかもしれませんが、戦争に関する映画ですね。戦争を扱う映画。は、撮りたいですね。大変ですけどね、お金かかって。それも出来れば、自分のコアな部分を主体として前面に出して戦争映画なんか撮れたら、さぞ愉快だろうと思いますけど。 |
| J: |
自分のコアな部分を主体にした「戦争に関する映画」って、どんな映画になるんでしょう?(笑) |
| K: |
自分自身、戦争というものがどういうものか判らないですけど、これから考えるしかしょうがないんですが。(笑)戦争というのは、やっぱりメカニズムでしょうね。固い言葉で言えば。人間側の言葉でいえば「戦争という運命」と言いますかね。戦争というのは、とてつもない事態だと思うんですよね。想像するに。誰にとっても。であるにもかかわらず実は(戦争は)絶えない訳じゃないですか。もう何千年も前からそうなんですけど。今日に至るまで絶えない。誰にとっても「とんでもない事態だ!エライことだ」と思われるにかかわらず、こうまで絶え間なく続けられているものを一度描いてみたい。たぶん他にもありますよ。ただ戦争というものが最も判りやすい、不条理・・・。あっていいはずがないのに、あり続けている。一番判りやすいものですね。また多くの人を巻き込む訳です。具体的にどうするか判らないですけど。細かい話になりますと、戦争映画ってヒドイ作品も多いんですけど傑作もあって、「戦争は悲惨だなあ」とかね、「戦争、誰が悪い」とかそういう視点で描かれている映画は、大体つまらない。「戦争、カッコイイ」という視点で描かれている映画は、またつまらない。「カッコイイ」とか「かわいそう」とか「悲惨」だとかではない、メカニズムとして戦争を描いている映画って本当に少ないんですけど、たまにはありますね。 |
| J: |
具体的には? |
| K: |
たぶん、ほとんどの人が御存知ないと思うんですけど、1980年代前半にアメリカで作られた「最前線物語」ってあるんですよ。これは戦争映画の歴史上最高傑作の映画でしたね。 |
| J: |
誰が主演なんですか? |
| K: |
リー・マーヴィンっていう人が主演なんですけど。もう死んじゃいましたけど。感動的なシーンがあって、「これって戦争だな」と思ってよく覚えているのは・・・、第二次世界大戦の話で主人公はアメリカ軍の鬼軍曹なんですけど、ナチスに対してバンバン進撃していくんですけど、自分の部下を平気で見殺しにする、とんでもない軍曹なんです。で、ドラマの最後の方でナチス兵を虫ケラのように「バーン!」と殺す訳です。ピストルで撃って殺した瞬間、部下が「今、電報が入りまして4時間前に戦争は終わりました」って言うですよ。「4時間前にナチスは降伏した」と。で、その軍曹は、顔色を変えるんです。「俺が撃つ前じゃないか」と。それで今撃ったばかりの、虫の息のナチス兵を「絶対こいつを殺しちゃいかん!」と、とにかく手厚く手当てして厳重に護送して本隊の方へ行く。っていう・・・。「あーこれが戦争だな」と思いましたね。「ひとつの戦争の描き方だな」と。全体としては、とんでもないワルなんですよ。この軍曹。「むちゃだ!」と思うんですけど。そういう人が実際いたかどうかは別として、一個の戦争のメカニズムを体現したような、「何が悪いとか、誰が悪い」とかじゃないんですよね。あれは素晴らしい映画でした。 |
「監督はこうあらねばならない」というのは一切ない。
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| J: |
次の質問ですが、役者さんに演技を付けるとき、あまり具体的な演技指導はしないとか? |
| K: |
そうですね。語弊がある言い方かもしれませんが、「なにを、やってくれ」というのは全部言うんですよ。つまり脚本にはセリフしか書かれてなかったとしても、例えば、「まず、ベッドに寝ていてくれ」と。「それで、このセリフのときに起きて冷蔵庫をあけて、お茶をとってくれ」と。で、「次のセリフで顔を洗ってまた戻ってこのイスに座って最後のセリフを言ってくれ」と。いった感じで「なにをしてくれ」と言う事は全部指示するんです。ただそれを「どうやってもいいです」と。それだけですね。やることに関しては指示を出しますが、どうやるかはお任せします。という事です。
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| J: |
質問変わります。初めての俳優さんと組むときに、事前に俳優さんと打ち解ける作業をするんですか? |
| K: |
「したいもんだなあ」と思うんですが。まず俳優さんは、特に人気者の場合、そうそう時間がないんですよね。というのと僕自身が非常に人見知りするタイプで、せっかく、そういう時間を設けてもらっても、うつむいたままでモジモジしてばっかりで喋れないとかですね、そういうことが多くて。僕の性格的な問題が多いんですけど。(笑)初めてやる俳優さんと、ようやく打ち解けるのは撮影が終わるころですね。これ、しょうがないですね。(苦笑) |
| J: |
それは「よくないな」と思ってらっしゃるのか、それとも「これは、これで緊張感があって」と思ってらっしゃるのか。どっちでしょう? |
| K: |
僕自身、そういう性格ですから。またそれで何本も撮ってきてますから。「もう、いいや!」と思ってます。さらに言えば監督って、大体そんなもんです。非常に事前から俳優さんと打ち解ける監督もいれば、全然打ち解けない監督もいるし。なんでか?といえば、性格が違うからで。「監督はこうあらねばならない」というのは一切ないんです。すぐ怒る人は、すぐ怒る監督だし。冗談ばっかり言う監督は、もともと冗談ばっかり言う人。僕は気が小さく、大体において丁寧ですから、お願いするときは頭を下げて、時には土下座してでもやって頂くと。(笑)「お願いします。ホントにスイマセンね」と小さい声でコソコソと目立たないようにやる。(笑)そういう性格だというだけで。監督というものの定まった性格というものはない。ということですね。 |
| J: |
次の質問ですが「CURE」とかは、なんとなくですが、ああいうストーリーを思いつくというのは想像できるんですが、「大いなる幻影」とかは大変失礼ながら「どういう頭してたら、ああいう事を考えられるんだろう?」と。(笑) |
| K: |
別に・・・、(苦笑)あれは事情があってですね、あれは実は商業映画ではないんです。 |
| J: |
あ!あれは映画美学校の・・・。 |
| K: |
そうです、そうです。映画美学校の生徒達の実習制作として作ったもので。あれは大学生の頃撮っていた8ミリ以来、久しぶりに自分の中に持っていたコアな部分だけでやったんです。人は「なんだ?訳判んない」って言うかもしれませんが、僕は「こういうのも有りだな」と思ったっていう、人に見せる気もなかったっていうものですねえ。 |
| J: |
それにしても、何故ああいうねえ・・・、思いつく人に「何故、思いつくんですか?」っていうのも愚問ですが。 |
| K: |
たいした事は、なにもしてないんですけど。あれも一応、脚本があって、脚本には最低限の設定と最小限のセリフしか書いてないんですね。「こんな感じ」と。で、ほとんど全てのカットを「こんな感じですから」とだけ言って、あとは武田真治さん等に「あとは好きにやって下さい。なにか他にセリフで言いたいことがあれば、言ってもいいです」と半分ドキュメンタリーのような形で。勿論俳優ですから、与えられた設定もあるし、完全なドキュメンタリーじゃないんですけど。「こっちはカメラ回しときますから、好きにやって下さい」と。すると元々、武田さんは寡黙な人で、「それにしても喋らないな、この人」(笑)って感じで黙々とやっている所をただ撮っていた。っていう作品ですね。それを繋げるとああなる。 |
| J: |
背景の中に人物がフェードアウトしていくような表現とかも、こっちにしてみたら「不思議な絵だなあ、これを思いついた根拠・・・」とは言わないですけど、どういうヒントがあったのか、それとも表現方法として冷静にチョイスしただけなんですか? |
| K: |
それに近いですよ。消えていくのは何か、主人公に「どういうヤツなんだっていう特性を一個付けたいな」と思いまして、「どういうヤツにするかな」って考えていた時に、ふと「自分が消えてしまったんじゃないか、自分の存在が無くなってしまったんじゃないか。という錯覚に陥るような人」と。存在感が希薄な人というのを、ふと思いついたんですね。にしてもそういうセリフがある訳でなし、「どう表現するかな?」「本当に消そう」っていう(笑)それだけなんですけど。 |
| J: |
そのプロの手法に、こっちが乗せられて・・・、ハマッてしまったんですね。(笑) |
| K: |
そういう意味では、あれを撮っていたときの意識は全くプロではなかった。(笑)というのはあるんですが。僕もああいうことを、そうしょっちゅうやれるとは思ってません。本当に思い付いたようなことを「こう撮ってみようかな」ってことは、普通ですと「しかし、待てよ」と。「そんなことして大丈夫なんだろうか、プロデューサーはウンとは言わないよね」とか「それは、あまりに自分のコアな部分だよね」と止めることを一切せずにやった。まんまやった。検証せずにやったということですね。ですから大変失礼な物を見せてしまいました。(笑) |
車選びだけは、うるさいですね。生理的にカッコワルイ車を写したくない。
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| J: |
黒沢監督の原風景、子供の頃とかに強く心に焼き付いたシーンはありますか? |
| K: |
自分の中に、鮮明な原風景はないですね。強いて言えば「その様なものはむしろ、ない」さらに言うと「実に平凡である」という、「自分はなんて平凡なんだ」っていう思いを、かなり小さい頃から感じてました。家庭環境にしても、子供ならではの解釈ですけど、「平凡だ!」と強く思ってましたね。だから未だに「自分は平凡である。普通である」という思いが非常に強く心に焼き付いています。ですから僕、生活も平凡ですし、全く普通の人間なんですけど、それ故、唯一「映画だけは平凡でありたくない」と思っているかもしれませんね。 |
| J: |
映画以外に、趣味は? |
| K: |
とり立てて声を大にして言えるような物はないですね。(笑) |
| J: |
中高生の時、スポーツとかはやってましたか? |
| K: |
クラブでちょっとやってましたけどね。 |
| J: |
あ、バレー部でしたね。 |
| K: |
(苦笑)そうですね。そんなに熱中しなかったですね。中学高校とやってましたけど。所詮はそんなにスポーツに熱心な学校でもなかったですし。中途半端なものでしたし、そんなに面白いとは思わなかったですね。つまらないんですよ。僕、自分の半生を振り返ってみて、(笑)なにも面白いことはない。 |
| J: |
普段、時間があるときは何をして過ごされるんですか? |
| K: |
この頃あまり時間がないんですが、かつては暇なときは趣味で映画を見ていた。(笑)見てる内に「ウン?このアイデアあるか?」とかいきなり仕事に移行してたり。(笑)なんだか境目がなくなってしまってますね。今は・・・、そうですね、暇な時は映画を見たりもしてますが、うちは子供が居なくて夫婦2人なんですけど。茶飲み話をしている・・・、(苦笑)位ですかねえ。あ、一時、これは本当に仕事がなくて暇だったせいもあって、テレビゲームにはまりましたけどね。
 |
| J: |
僕はテレビゲームやらないんですけど。「ドラゴンクエスト」にはまったとか・・・。 |
| K: |
ええ、テレビゲーム全般に、はまった時期が・・・、本当に暇だったんでしょうね。「テレビゲーム評論」とか雑誌に書いたりもしましたけど。(笑) |
| J: |
あー、そうなんですか。趣味の話に関連するんですが、監督の作品に出て来る車が、僕なんかの眼で見てると「なんで、ここでこんな車が出てくんの?」という位、外車が出てきますよね。フィアットが出てきたりフォードが出てきたり。 |
| K: |
車はうるさいですね。 |
| J: |
車は意識的に選んでるんですか? |
| K: |
物凄く意識的に選んでるんですけど、なかなか僕の要求どおりの車が出て来ないんで、いつも妥協に妥協を重ねて。車ったって、そんな熱狂的なカーマニアということはないんですけど、車種はうるさいですね。 |
| J: |
失礼ながら、そういう車種がうるさい映画っていうのが少ないせいかもしれませんが、かえってあそこまでやると違和感がある・・・。(笑)「タイアップか?」なんて。(笑) |
| K: |
イヤイヤ。ただやっぱりね、生理的にカッコワルイ車を写したくない。ただイヤでもストーリーの設定上、出て来るものですから。こっちでオリジナルで作るわけにもいかなくて、何かを出さなくてはいけなくなるんですね。で、ある中から選ぶ。それが苦しい作業なんですが、あんまり、そこで「現実はこうですから」って、そこには捕われたくない・・・。 |
| J: |
(笑)あー、そうですか。 |
| K: |
ええ、車選びだけはうるさいですね。ただ大抵は望み通りにはならないですよ。 |
| J: |
さっき、「生理的に写したくない」とおっしゃいましたが、それだけですか?映画で表現したいことの反映とかは?例えば「このキャラクターなら、この車種」とか。 |
| K: |
両方ですね、総合的な判断ですね。だから「何年型の何々」と。僕、無茶苦茶な要求はしてないですよ。「あるはずだ。存在している」ただめったに無い・・・。(笑) |
| J: |
ご自分では、何に乗ってはるんですか? |
| K: |
今はもう乗ってないですね。前は・・・、いや、たいしたの乗ってません。(笑)クラウンなんですけど。これも人からもらった、ってだけで。 |
| J: |
あんまり、こだわってるように聞こえないですね。(笑) |
| K: |
あのう、車・・・、うるさいんですよ。 |
| J: |
個人的に「これに乗りたい」とか? |
| K: |
それは一杯ありますけどね。ズバリ言って「本当に乗りたい車、欲しい車買え」って言われたら数千万かかるでしょうね。 |
| J: |
一台にですか? |
| K: |
一台です。だから「無理だな」っていう・・・。(苦笑)「クラウンでいいや」っていう。(笑)感じですかね。車、j-in さんはうるさいんですか?
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| J: |
うるさくはないんですけど、カーグラ派とかじゃなくて、自分のキャラとかレアな車種やハズシ技とかを工夫する「乗り姿追求派」ですね。 |
| K: |
僕はそういう意味じゃ、全く古いオーソドックスなカーグラ派ですね。育ってきた世代もあって、1960年代の車がやはり一番面白いですね。 |
| J: |
アメ車、英国車? |
| K: |
アメ車はダメですね。ヨーロッパ車ですね。 |
| J: |
イタリア、イギリス・・・? |
| K: |
やはりイタリアに多いです。アルファだとザガート系。SZやTZもいいですがジュニアZもいいですね。一度街で2600SZを見かけた時は感動しましたね。それからランチア。フラミニアのスペル・スポルトとか。アバルトはあまり見たことがないのではっきりとは言えませんが、スコルピオーネはそのあまりの小ささに驚きました。 |
| J: |
イタ車、いいですよねえ。最近イノチェンティ・ミニ・デ・トマソを街で見かけたんですけど、あの直線的なデザインが新鮮でしたね。懐かしいというか。(笑)でもあれ、中はミニなんですよね?マセラッティなんかも好きですよ。 |
| K: |
(笑)あと、フェラーリですね。僕は以外と250ルッソとか330GTCとか地味なのが好きです。あ、あとランチア037ラリーと吉祥寺で初めて遭遇した時は、本当に天地がひっくり返るほどの衝撃を受けました。 |
| J: |
そんなんで街中走ってるんですか!(笑) |
| K: |
イギリスならば、やはりアストンマーチンのDB4GTザガートですね。フランスだと、少し新しくなって、意外と思われるかもしれませんがマートラ・ムレーナ。ドイツ車は・・・あまりないかな。 |
| J: |
監督は結構、熱いクルマもお好きなんですね。意外な感じがします。(笑)そろそろ次の質問ですがミュージシャンの「ゲイリー芦屋」さんを映画音楽に起用されている作品が何本かありますが、何故、ゲイリーさんなんですか? |
| K: |
ゲイリーさんにお願いするときは自分の映画の音楽を、いわゆる映画音楽にしたいときなんですよ。ゲイリーさんは本当に映画音楽に詳しい方で。それこそ「ゴダールの〇〇〇に出てきた、あんな感じの曲にして下さい」って言ったら「判りました」って即、判るって方で。「スピルバーグのあの感じにしたいのよ」「あー判りました」っていう映画音楽の言語が通じる方なんですよ。僕も音楽は詳しくはないですから。音符も書けないし、「あの感じ」って言って伝わらないと困るわけですよ。映画の題名含めて「あの映画の、あのシーンみたいな音楽の感じ」「判りました」って通じる方なんですね。そういうのが通じる方は、とても少ないんです。日本では。通じないんですよね。意外な程、映画音楽のことを知らない方が多いんですよ。 |
今、日本のホラー映画は世界トップクラスだと思ってます。
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| J: |
監督の一連のホラー作品に関してなんですけど、ノイズ。コップを置く音とか、蛇口から垂れる水滴の音とか、すごく多いですよね。それを僕らが聞くと、すごく怖いわけなんですけど、ああいう手法をピックアップした理由は? |
| K: |
理由はですね、映画ってどういう時に「怖い」と思うかっていうことに尽きるんですけど。ようく分析してみますと映画で「あ、怖い!」って思うときって、なにかが、どっかにあるけど、それが映ってないときなんですよ。映ったら、びっくりするけど怖くないんです。バーン!となんかが出てきても、びっくりはするんですが、それもすごく怖い顔して出て来たら「わー!この顔怖いなあ」と思っても、そんなのじきに馴れますし、顔が怖いだけであって、実はそんなに怖いものでもないんですよね。映画で一番怖いのは、なにも映ってないのに「なんか居るんじゃないの?」っていうのが一番怖いと分析した訳です。すると映画は、何度も申してますように「現実を四角い枠で切り取っている」訳ですから好都合なんですね。映ってない所になにがあるか見えない訳です。だから映ってない事柄を音で表現する。「ゴトッ」とか「ギー」とか。すると何でもないシーンが妙に怖くなるんです。でもこれはホラー映画の一種の常套手段だし、別に「単に技術的な事だけだろう」と思うかもしれませんが、実は結構、映画の本質を突いているんですよね。今言ったように「実は切り取っていて外にも現実がありますよ」っていう映画の基本的な特性に係わる技術なんですよね。ですから、この技法はアニメだと全く通用しないと思います。外がないから。これがアニメと実写の大きな違いなんですよね。あと、外でなくても、遮られた向う側ですね。一番代表的なのは閉じているドア。単にドアが閉まってるだけなんですけど「なんか向うに居るんじゃないのかな」と。それこそ、微かな光とか、微妙な音で「このドアの向うになんかあるんじゃないの」っていう表現はおそらく実写でのみ可能だと思います。アニメではね、いくらドアの絵を写しても人は、ドアの向うになんかあるとは思わないと思います。「それはドアの絵だろ」っていう。(笑)実写だから活きる効果だと思いますね。余談ですけど、(微笑)ある映画のシーンで、亀が地べたに引っくり返ってるんですよ。で、裏返ったまま起き上がれないで
もがいてるんですよ。そこから(シーンが)始まって、それが2〜30秒映っていて「なんだ?」と思ったらカメラがスーッとこっち向いて、人が普通に喋ってるんですよ。で、それをズーッと撮ってるんですよ。それで人が喋ってるんですが、もう亀が気になってしょうがないんですね。映ってないけど、向うで亀がもう、こんなになってもがいているのが、ありありと判る訳ですよ。(笑)ちょっと欺といですけど、まさに実写の力ですよね。
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| J: |
その話に関連するんですが「降霊」で、お化けが実際に出てくるじゃないですか。それで「貞子」みたいなポーズをとりますよね。舞踏みたいなポーズをね。あれはあれで怖いんですけど。あれはモロに実体を見せてはいるんですが、意味不明の格好をするから怖いんでしょうけど。あの演出をピックアップした理由はなんでしょう? |
| K: |
これは、また話すと長くなっちゃうんだよな。(笑)幽霊表現ということなんですけど。勿論、何も写さないまま終わってしまう映画もある訳なんですけど、一方で何かを写すことも映画は出来る訳ですよね。仮に幽霊、ホラー映画ですから。「写すとすると、どうする?」っていうと、これが大問題なんですよね。「幽霊とは何か?」っていうことにも係わってきますし。個人差がありますが、僕自身は見たことがない訳です。(笑)そんなもの居るとも思えないし。現実にはいない、また見たこともない物を、しかし表現として見せる。東京の街のようには行かない訳ですね。居るから撮るという訳には行かない。見た事もない物は作るしかない。そこでどうするか?っていう問題なんですけども。僕が採ってきたやり方っていうのは、ひとつの方法なんですけどね。「幽霊は、ほとんど人間であるが人間とは決定的に違う物である」と。その決定的な違いをどう出すか?っていう時に、あの動き・・・、まあ立ち姿とか、立つポジションとか照明の当たり具合とか、全部もの凄く神経使いますけど。しかも生身の俳優さんが現場に居て、実際に表現するとなると尚更です。合成でホワーンとくっ付けることは、それはそれで可能なんですけど。でも僕は生身の俳優さんに現場で表現してもらうという方法を採っている訳です。何故か?簡単に言いますと、ひとつは、この方法は巧くいくと非常に安上がりなんですよ。俳優を連れて来て、演じてもらえばいいわけですから。通常の演出と変わらないですから、変なメイクもする必要がないし。幽霊をこういう形で表現するということは日本映画が初めてだと思います。これを世界で、たぶん最初にやったのが「鶴田法男(監督)」です。彼が「生身の人間を、そのまま使って幽霊を表現してしまう」ということを10年位前に、やったんですよ。鶴田さんは僕より若い方なんですが。それに僕自身が衝撃を受けまして、その後何度かチャレンジして、僕自身ホラーが好きでしたから今日もまだ、それの改良版・変形版をやっている訳です。「リング」はもっと後です。リングで(あの表現方法が)一挙に有名になったんですけど。 |
| J: |
鶴田監督は、どういう風に見せたんですか? |
| K: |
立って、こっちに近づいて来るだけなんですけど・・・、鶴田さんのは衝撃的でしたねえ。一番の特徴は、ちゃんとした光が当たっていない。ということなんですね。「普通、映画の照明はこう当たるよね」っていう所に居ないっていう。(笑)「普通こんな所に人は立たない」っていう所に居るっていう。(笑)ことですね。それが、ゆっくりこっちに近づいてくる。(笑)それだけで「わ!これは人間じゃないものが、迫ってきた!」と。その時の歩き方というのが、所詮俳優が演じているものなんですが、なにか人間ではない歩き方なんですよね。僕も色々、工夫してやってるんですけど、どうやったら人間と違って見えるのかというのは、理屈では言えないですね。「腕の開き方が、普通より広い」とか・・・。
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| J: |
それを演出するのは、ややこしいとか、そういうんじゃなくて・・・、(笑)指示するんですか? |
| K: |
ええ、しますね。これはホラー映画にとっては要なんでね。こここそ、力を入れて(笑)あとは感覚的なものですけど、なんかちょっと人間とは違うように。人間ではあるんだけど決定的に違うように、もっていくという。「腕の上げ方から、足の踏み出し方」で表現する。舞踏みたいな感じですかね。 |
| J: |
役者さんが困るでしょうね。 |
| K: |
大変、困りますよ。それでも、とことん人間を使ってやるという所が、鶴田さんの発見だったんですよ。アメリカだったら人形とかね、如何様にでもできるんですよ。
でも、それをやるとモンスターみたいになっちゃうんですよね。あくまでも人間が無理してでも限界まで演じるからこそ、やはりどっか人間なんですよ。っていうのが鶴田さんの発明だったんですよね。リングにしても日本の人は、けっこう怖がったでしょ。ある種地味なね、額に汗する表現で。(笑)しかも外国の人も「なんじゃこれ?」って言うのかと思ったら、これが結構物凄く怖がるというね。(笑)だからリングは(ハリウッドで)リメイクもされてる訳ですし。だから今、日本のホラー映画は世界トップクラスだと思ってます。 |